for me and you.



2008年12月31日。大晦日。
お節料理の食材の並ぶスーパーマーケットでカートを押しながら小島有希は手際よく、商品を買い物カゴに収めていく。
毎年恒例、と言えるまでになった今年最後のイベントそして来年最初のイベントのために買い物は欠かせない。

藤代誠二は明日、2009年1月1日に24歳になる。


*****
大晦日は一緒にすごし、元旦の朝それぞれの実家に帰る。
そんなパターンになってから5年はたつ。
月日がたつのは早いものだ。
小島も藤代もとっくに中学生ではなくなり、もうすでに学生ですらなく自分で稼いだお金で自分を食べさせる。大好きなサッカーをすることが仕事になって本当に、本当に私は幸せだ、と思う。
毎年そう思うのは決まってなぜかこの日だった。
自分の誕生日とかではなく、年末。藤代の生まれた冬。
白い息をはいてストールに顔をうずめながら愛車に乗り込む。
エンジンをかける。今日は昨日よりも寒い。

藤代の大きくて豪華なマンションに近いコインパーキングに車をとめ、重い荷物を抱えてエントランスに立つ。
すると一階に降りてきたエレベーターには藤代がのっていた。

「あ、おかえり」
「・・・ただいま。どこいくの?」
「ちょっと、買いもの。1時間もしないから」
「? わかった」
「ごめんな」
「ご飯作り始めてるよ」
「わかった」

藤代はモッズコートの裾をはためかせて、車のキーを握って走って行った。
午後5時。
小島は藤代の部屋のドアを開ける。


*****
思いつき、といったらそれまでだけど。と藤代は思う。
けど確信的にそう思ってしまったのだからしょうがないじゃないか、と言い聞かせる。
ああ、興奮する。
絶望的に混んでいる都内の道路を前にしても藤代は動じなかった。
どうしよう、わくわくする。
ネガティヴな感情は全く湧いてこない。
進む気配のない国道からそれて、藤代は車を走らせる。
カーナビが裏道を教えてくれる。


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きっかり50分で戻ってきた藤代はえらく機嫌が良かった。
なにを買ってきたの?と尋ねると俺の誕生日プレゼントと答えたので小島はあきれてしまった。
相変わらずオレ万歳なヤツだ。
付き合いだしてからずいぶんたつが、一応誕生日にはお互い物を贈る。
23歳の誕生日に小島がもらったのはダイヤモンドのピアスだった。
藤代にはマッドフットのスニーカーをあげた。
今年は欲しがっていたパタゴニアのダウンジャケット。車の中に忘れてきたが既に買ってある。

夕食はあまり量は作らない。夜には年越し蕎麦を食べるし、明日も明後日もお節を食べるので。ただケーキは用意する。
藤代は割と甘いものが好きなのでないと不満らしい。もちろん藤代は小島の誕生日にも宝石みたいにキラキラした高いケーキを買ってきてくれる。

大晦日はたいてい洋食。今日はシチューにする。藤代は料理ができる人間なので、基本的に小島と一緒に台所に立つ。サラダ用の生ハムの封を開けようとしている藤代に手を洗うように促して小島は鍋の火加減を見る。


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バラエティ番組を順番に見て飽きた所でNHKにチャンネルを合わせる。知らない若い歌手が泣きながら熱唱している。
あと一時間もすれば自分は24歳になる。
どうしよう、楽しい。
藤代は内心はしゃいでいた。小島に悟られないように、だが。


*****
年越し蕎麦を食べ終えると、カウントダウンが始まる。
今年ももう終わりだ。
テレビの中のアイドルが10秒前から数えだす。
小島も一緒に声を出す。


*****
2009年1月1日、藤代誠二24回目の誕生日。

「あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします」
小島が自分にむけて丁寧に頭を下げる。
同じように藤代も返す。そして続ける。
「結婚しよう」
「は?!」
「いや、してください」
固まったままの小島を見る。
「結婚ていうのは一生一緒にいる約束みたいなもんだろ、今日、ていうか昨日か、急にその約束が小島とならできると思ったんだ。」
「だから、あなたを、俺にください」
夕方、買いに走った指輪を差し出した。
小島に贈るものだけど、間違いなく自分への誕生日プレゼントだ。
急に形が欲しくなった、俺と君の。
「・・・なんかもう藤代らしくて何も言えないわ・・・」
小島は笑いながら指輪を受け取り、薬指へ滑らせる。ぴたりとおさまる。
「なんでサイズわかったの?」
「何年小島と手をつないでると思ってるの?」

そう言ってキスをした。
わくわくして楽しくて、でも変わらない二人でこれから先もずっと。


















====================================== ミオさんご結婚おめでとうございます、新天地でも頑張ってください!
そして藤代24歳おめでとう、今年もEXITをよろしくお願いします。 という詰込み型テキスト。 inserted by FC2 system