Blue,Red,White and Gold





藤代誠二はやたら青の似合う男だと藤村は思う。
12の時からジャパンブルーを着て走っていたことだけが理由ではないと思う。
単純にそうゆうやつなんだろう。青がテーマカラーという感じで。
藤代にとって褒め言葉だ。サッカーをやっていて青が似合うといわれて喜ばない奴はいないはずだ。
今も藤代はサイラスのサックスブルーのシャツを着てつまみのから揚げにがっついてる。
1万3千円もする、ハーフボタンのシャツを着てがっついてる。

「なに?」
ようやく皿から顔をあげた藤代が自分の額のあたりをじっと眺めている藤村に気付く。
「や、なんでもない」
藤村は視線をずらして、グラスを手に取った。
「そう?」
「そう」

ならいいけど、と藤代はメニューを手に取る。
圧倒的な飲酒量を誇る藤村について来れるのは今のところ藤代ぐらいしかいない。
ようやく藤代も合法的に酒が飲める年齢になった。だからスケジュールさえあえば飲みに来る。ただし、東京都民と京都府民なのでそう簡単にはいかないけれど。

「俺、焼酎ボトルで頼むけど、藤村は?またビール?」
「んーそうやな、それで」
「あいよ」
すいませーんと愛想よく笑いながら藤代は店員を呼ぶ。
「なあ。」
「なに?」
「お前はさあ、どうすんの」
「何の話?」
「話、来てるんやろ」
海外移籍。
「ああ、それね、その話ね」
藤代は藤村の予想に反して特に大したリアクションをしなかった。
わりとあっさりとした反応。

「もちろん行くよ」
「どこに?」
「イギリス」
間宮がイタリア、椎名がスペイン、天城がドイツなら俺はイギリスかなって。
「そんな決め方かい」
「あとは伝統あるサッカーに興味あるなと思って」
サッカーじゃなくてフットボールの国だし。
「まあお前ならどこでもやれるやろな、うまく。それは別にいいねん」
「じゃあ、何が言いたいの?」
「言わんと分からん?」
「小島のことだろ?」
藤代はシシャモをくわえながら言った。
「わかっとるやん」
なんやしらばっくれおって。

「置いていくよ」
「妥当な決断やね」
「藤村ならそうゆうと思った、絶対」
運ばれてきた焼酎を飲みながら藤代は笑う。

俺と小島はそうゆう風にしかなれないよ。
高校んときもそうだったし。
そうするしかないんだ。
この年になっても。選択肢がもっと増えても。

藤代と小島は早く出会いすぎたんじゃないか、と藤村は思った。
自分の片割れのピースになる人間を早く見つけすぎたんじゃないかと思う。
そうじゃなきゃ、何度も何度も離れる必要はなかったのに。
妙にまっすぐした眼で小島の話をする藤代を見るたびに藤村はそれを考えてしまう。
やっぱり自分はこいつらを愛してるんだろうな、と藤村が感じる瞬間でもあった。
藤代と小島。
ああ、きっとそうだ。

「もしさ、」
「うん」
「小島に一緒に行こうといったら、小島はどうすると思う?」
一緒にイギリスに行こうって。
「行くんちゃう?」
藤村は真顔で答えた。
「そんな風に思ってないだろ絶対。」
「思ってへんよ」
「ほらな」
なんでそうゆうわけの分からない冗談をいうんだよ。
「小島ちゃんは行かへんよ、絶対」
「そうだよ、小島は来ない」
だからこれでいいんだよ。

「お前は小島ちゃんにほかの男が出来るとかおもわへんの?」
「俺ほどのいい男はなかなかいないって」
こいつが言うとあんま冗談にならないな、と藤村は思った。
顔と身長と体とサッカーとを持ち合わせた男。
「ここにいるやん」
「どこ?」
「俺や俺」
「それはない」
「言い切りよったな」

藤村は絶対そんなことしないよ。
つうかできないよ。
そうゆう、よこしまな男じゃないから。
あと藤村にとっても小島は特別だから。

「それに藤村は俺の事も愛してるから」

ぶはあ、とビールを盛大に吹きそうになったが藤村はかろうじてこらえる。
藤代はいたって真面目だ。
「なんやねん、それ」
「間違ってないだろ」
「・・・・・」
「な。」

そうゆうことにしてやってもええけどな。






















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藤代と藤村。大好きな二人。
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