前からやってみたかったんだけど。
と前置きしたうえで、秀二はとんでもないことを言い出した。
「風呂一緒に入ろう」
絶句したのは言うまでもない。

バブルズ

「ちい」
「ちーい」
「ちっづきちゃ〜ん」
なんでそんなに楽しそうなのかな。曇りガラスの向こうで秀二が私を呼んでいる。怖い位ご機嫌な様子で。飲んでないのに。(だいたい秀二は飲んだからどうこうなるタイプではない)
いやだいやだと散々抵抗したが、なんで?と笑顔のゴリ押しで脱衣所まで連れてこられた。いや本当に無理なんです。半泣きになりそうなのに秀二はもうそれは見たこともないような笑顔だ。
「今更照れることないじゃん」
ここから見えるのは、秀二のバスタブにつかるシルエットだけだ。自分はさっさと脱いで浴室に入ってしまった。
「照れるよ!」
暗い所で見られるのと訳が違う。黒子から皺まで大公開じゃないか。そんなの無理だ。しかもまだ夜ですらない。夕方だ。
「もう俺、千月の体で見たことないところなんてないよ?」
「もうやめて・・・」
例え本当にそうだとしてもそういうことは言わないでほしい。心臓に悪いから。わあもう本当に恥ずかしい。それ以外言葉がない。
「自分で脱ぐのと俺が脱がしにいくのどっちがいーい?」
「自分で脱ぎます!」
「早くしてね〜俺ふやけちゃう」
シャツのボタンに手をかける。
ああもうヤケだ! せめてこれぐらいはと、タオルで体を隠して勢いよくドアを開けた。
秀二はシャボン玉を作って遊んでいた。のんきだ。
「あんまり見ないように」
ああ恥ずかしい。本当に恥ずかしい。顔から火が出るってこういうことだ。
「おいで」
秀二が手招きして笑った。



inserted by FC2 system