きみとあるく



光が乱反射してくらくらした。 このやたらと黒光りするものはどうも好きになれない。
道路に敷き詰められたあの、黒いもの。
「それは克朗は芝が好きだからでしょ。」
亜子は笑いながら白いミュールを脱いだ。

「何してるんだ?」
「GOって見たことない?」
「映画?」
「そー」
「クボヅカが出てたのか?」
「そー。それ」
それの真似。と、裸足で道路にひかれた白線の上を裸足で歩き出した。
「このままどこまでいけるかやってみるの。映画と同じようにね」
「ええ?」
「ちゃんとついてきてね。」
「そんな」
口ではそういいながらも結局は逆らえないのでおとなしくその後を行く。うきうきしながら亜子はずんずん先に進んでいく。
「なあ」
「なにー」
「足の裏、熱くないか」
「アスファルトじゃないからへーきー」
亜子は慎重に白線だけを踏んで歩いている。
「そうか」
「ねー」
「んー」
「克朗も裸足になればいいのに。気持ちいーよ」
彼女が体ごと振り返った。足の爪にはカラフルな装飾が施してあってキラキラしている。
「俺は亜子と違ってスニーカーだからなあ」
「つれないなー」
「そもそもどこ行くんだ?そもそもどこに向かってる?」
「映画と同じようにあたしんちに来る?」
「誰もいないのか?」
「両親も弟もいる」
「じゃあやめよう」
今何考えたの?とあきれた声を無視して亜子の手を取った。
「亜子が考えたことで正解」
「意外と克朗ってエロイよね」
「そうかな。どうせならもっと遠くに行ってみようか」

初夏の日曜、午前11;00。



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