きみとねむる



「目が覚めたとき、目の前にあるっていいな」
開口一番、克朗はベッドの上でそう言った。
窓が少し開いていて風がゆっくりと克朗の頭上でカーテンをはためかせている。 今日は天気がいいようだった。時計の針はもうすぐ10時ちょうどをさす。 独り言を言ってるようではなかったので私は返事をする。
「何が?」
私は枕元にあったファッション誌をぱらぱらとめくっていた。朝起きて活字を読むと目が冴えてくるからだ。
「亜子みたいな女」
間髪いれず返って来る言葉に私はとりあえず沈黙する。
「・・・・・」
「誉めてるよ」
「わかってるわよ」
何と返事をしたらよいのかわからないから黙っているのだ。
「まあまあ、とりあえずこっちおいで」
私はむくれたわけではないが、克朗は私に手を伸ばした。その先30センチに私の肩先。大きなベットには多分もう一人分スペースがある。
「もう目が覚めたんだけど」
体が少し空腹を訴えている。
「もうすこし。今日は休みだろ」
「いい天気なのにもったいないじゃない」
覗き込んだ太陽がかわいそうだ。晴天に微風。10時。予定ナシ。何をすべきかなんて分かりきってることだ。
「いい天気だから、なにもしないてのもたまにはいいじゃないか」
贅沢してるみたいで。
そういうと克郎は笑った。


彼は私の体を引きよせるとつむじにキスをした。 私は逃げ道を失った体で心音を聞きながら洗濯するはずだったシーツの上で目を閉じた。 このあとのブランチは克朗に作らせようと思いながら。



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