最悪だ。神楽は心の中で叫んだ。


dose anyone beat him?



教室はもちろん無人で(テスト期間中はみんな早く家に帰る)時間は午後3時。
太陽は下り坂なもののまだ十分に明るい。なんてたってまだ7月だ。
なのになぜか自分は冷たいゴムの床に転がされている。体は汗ばんでるのに背中は冷たくて変な感じ。ぎゅっとつむった目を恐る恐るあけると自分に覆いかぶさっている沖田と目が合った。にやりと言いようしかない顔で沖田が笑い、私の頬を節だった掌で撫でた。
順を追って考えていこう。
・ひとり寂しく銀ちゃんの補講を強制的に受けさせられていた私が教室に戻ってきた。
・何故か沖田が私の机に座っていた。
・どこにいたのかと問われたので銀ちゃんとこに居た、と答えたらなぜか一気に機嫌を悪くなった。
・そして喧嘩を売られた。
・ので買った。
・うっかりしてマウントポジションをとられた←今ここ
ここまではいい。(よくはないけど、まだ流れが理解できる)
沖田がまったくここから動く気配がしないことが問題だ。
「どくアル」
「やだ」
「やだじゃねえよ」
撫でられた頬が熱を帯びた気がする。
「お前の負けな」
「まだ勝負はついてないアル」
「俺はここからどく気はないでさァ」
「いやどけよ、決着つけてやるネ」
「やだね」
「このクソガキが」
「ガキで結構。つうか同い年だし」
「・・・お前一体、何がしたいネ?」
「セックス?」
「ふざけんなァァ!!!!」
渾身の力で沖田を吹っ飛ばした。貞操の危機が迫っていることに気付けないとは一生の不覚だこのヤロウ。
なにが「セックス?」だ、疑問形でいえばかわいいとでも思っているのか。
私は制服のスカートをはたきながら立ち上がった。
派手な音を立てて転がった沖田はうめきながら上半身を起こした。
「いってェ」
「冗談でも言っていいことと悪いことがあるダロ!」
「・・・冗談じゃねーし」
「寝言は授業中だけにしとけヨ」
「いやだから冗談じゃねーし。俺お前好きだし」
「はあ?」
「告白の返事がはぁ?とはお前ひどいにも程が」
「だとしても順番がおかしいネ!押し倒されてから告られてその信憑性がどこにあると思ってんだヨ」
胡坐をかいて座った沖田を見下ろして言ってやる。
前から何を考えてるのかわからないやつだとは思っていたけどここまで馬鹿だったのかこいつ。
数秒考えた上、頭をかきながら沖田が口を開いた。
「俺は勝ち目のない勝負はしない主義なんでィ」
「お前の主義なんて聞いてないアル」
「だからお前も俺のこと好きだと思ったんだけど」
「はああ?」
もう馬鹿だ、馬鹿だろこいつ。そうとしか考えられないんですけどォォ!
「てゆうか好きだろ?」
「はあああ?」
「違う?」
にっこり笑われた。顔だけは無駄にいいから言葉に詰まってしまう。
「・・・ちがうネ」
「本当に?」
またにっこり。
「違うもんは違うアル」
「俺は好き」
「・・・・・・」
こんな時のタイショホウは誰も教えてくれなかった。(漢字も分からないし)
いろんな感情が頭の中をぐるぐる回っている。
「なに一人百面相してんでィ」
いつのまにか沖田が立ち上がって目の前にいた。制服のズボンのポケットに両手を突っ込んで立っている。沖田の癖だ。
「順番が違うってんならチューでもする?」
「するか!」
振り上げた右手はあっさりよけられてしまった。
「しねえの?」
「誰か、この馬鹿なんとかしてぇぇぇ!」
「残念だな、俺らぐらいしか残ってないでさァ」
確か沖田の言うとおり、生徒の姿は全く見えず、頼みの職員室は別校舎だ。まさに絶体絶命(これは書ける)だ。
「まあこんなところでヤるのもあれなんでチューだけで我慢してやらァ」
もう何を前提に沖田が話を進めているのが全く分からない。いつ私がお前を好きだと言った!
「もうガキっぽい喧嘩はやめて、いい加減俺のもんになってよ」
突然、沖田が真顔になった。じりじりと壁際に追いつめられる。掃除用具箱にぶつかってこれ以上後退できなくなった。
「・・・誰がなるカ!」
「でも嫌じゃないだろ」
返事をする前に声はあっという間に飲み込まれた。
もっと別のシチュエーションを考えてこいヨ、バーカ!

















====================================
ごく普通に始まらないのが沖神です。3Z沖田はだいたいこんな感じだと思ってる。
inserted by FC2 system