midnight for late morning





ぱちりと、目が覚めた。
目覚ましにも頼らずにすっきりと覚醒したのは久しぶりな気がする。
布団から上半身を起した所で沖田は隣で寝息を立てている神楽に気付いた。
すうすうと規則正しく寝息を立て、体を横向きにしながら彼女は眠っていた。
勝手知ったるとばかりに屯所に侵入し、沖田の部屋に飛び込んできたのが昨日の深夜だった。


「・・・夜這いですかィ」
「・・・違うアル」
珍しく机に向かっていたのだが筆を置き、問うた。
一応深夜であることに気を使ったのかいつもより比較的静かに障子を引いた神楽に向かって。
こんな夜更けに忍び足でやってくるの者に他に心当たりがなかったので沖田は驚かなかった。
ここまでどうやって入ってきたのかは問わないことにする。屯所の入口で見張りの隊士が倒れていないことを心の隅で祈った。
面倒はごめんだ。
「家出したアル」
「そうですかぃ」
大方、銀時と喧嘩でもしたのだろうと推測し、理由を聞かずに招き入れてやった。
荷物はどこへ行くにも持ち歩いている傘だけのようだった。
「随分、身軽な家出だなァ」
「自分の心さえちゃんとあれば荷物なんていらないネ」
「んなこと言ったって格好よかねーぞ」
「そんなことないアル」
「ともかく、おれぁねむいんだ。お前の愚痴を聞いてる時間はねえんですよ」
沖田は大きく欠伸をしながら答えた。
机の上の明かりを落とす。頭が活動を停止しようとしている。
「冷たいアルな、お前。悩んでいるかわいい乙女がやってきたのにさっさと寝ようなんて男の風上にもおけないアル」
「なら風下にいてやらァ」
徹夜続きの勤務が続いていたので沖田はすでに睡魔に襲われていた。思考回路が次々と遮断されていく。
ずるずると布団を引っ張りだし、寝る準備をはじめた。
神楽は黙って沖田を見ていた。
「俺ァもう寝るが、お前はどうする?」
「・・・帰る」
「帰れんのかィ?」
「お前の寝顔見たってしょうがないネ」
「じゃあ、一緒に寝るかィ?」
「・・・しょうがないアル」
沖田は最後まで憎まれ口を言い続けた神楽を抱え込んで眠った。
人の体温は安心するものだ。夢うつつでそう思った。


沖田は神楽の髪をすいてやった。
銀時がまめに梳かしてやっているらしくいつもつるつるだ。
時刻はいつもの起床時間を過ぎていたが今日は非番なのでよしとしよう。
もう一度眠ることを決めて布団にもぐりこむ。
眠りについたときと同じように隣の神楽を抱えた。
「・・・苦しいアル」
「狸寝入りだったのかよ」
「違うアル。今お前に首絞められて起きたアル」
「絞めてねーや」
神楽が沖田の胸の中から顔を上げた。
「どうしてもっていうなら、このままもう一回寝てもいいネ」
「誰の布団だと思ってるんでィ」
もう一度、神楽の髪をすいてやる。
「お前、まともな顔してると気持ち悪い」
「朝からケンカ売る元気あるならとっとと万事屋に帰んな」
「・・・やっぱりまだ眠いアル。おやすみアル」
「どんだけわがままなんだィ・・・ったく」
本当にそのまま眠りに落ちてしまった神楽を抱いて沖田はため息をついた。
朝飯がなくなっちまうじゃねえか。




















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沖田はものすごく神楽をかわいがればいい。
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